ダヤンの冒険物語新作を書き上げて、挿絵の作業に入る。
アトリエから近い飛田給の版画工房を紹介されて、せっかくなので表紙と何点かを
エッチングでやってみることにした。
エッチングは『タシルに帰る』以来なので、12年ぶりになる。
肩を骨折して大船の版画工房通いが辛くなり、その後の挿絵はペンに切り替えたのだ。
今度はカブで30分なので楽勝。
とてもいい工房で、いろいろ独自の工夫があるのも面白かった。
銅板をニードルで彫って何度か腐食を繰り返すのだが、水で流した後、
お醤油で洗っているのには驚いた。
みるみる銅板がピカピカになっていく。
「ヨーロッパではワインビネガーを使っているけれど、お醤油の方が優れているので、
近頃は向こうの工房でもソイソースを使用しているらしい」とのこと。
わき目もふらず夢中で彫って、なんとか一枚仕上げた。
刷る前の銅板は美しく輝いている。
「銅板の状態できれいに見えたら、刷ったものもよくできているはず」
と言われてホッとする。
何しろ彫っているときは、いったいどう刷り上がるのかさっぱりわからないのだ。
見て、どちらがペンでどちらがエッチングかわかるかな?
ペンに比べて、エッチングの線はピカピカと浮き上がって見える・・はず。
って、これじゃよくわからないか、実物を見ないと。
先日、練馬美術館にゴーリーの作品展を見に行った。
今度の挿絵はゴーリーが目標。
あくまでくどく、しつこいペン画とエッチングに挑戦していくつもりだ。
挿絵もともかく、お話もすごく面白いよ。
来春発売の長編10作目新刊をどうぞお楽しみに!